中学受験の理科 気象(3)~日本の四季と偏西風・季節風・気団の関係
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2023/09/14
日本以外の国にも四季はありますが、日本は特に四季の変化をはっきりと感じることができますね。季節ごとの食材を使った料理を味わうのも、楽しいものです。
日本における季節の変化とは、どのような仕組みによるのか。「気象(3)」では、日本の豊かな自然環境が生まれる理由を明らかにしていきましょう。
ちなみに、気象庁では四季を、「春:3~5月」「夏:6~8月」「秋:9~11月」「冬:12~2月」と定めています。
なお、今回テーマの学習は、気象シリーズを順に理解してから取り組んでください。
【1】
まずは、「気象(1)」で低気圧・高気圧の仕組みを確認します。
⇒ 中学受験の理科 気象(1)
【2】
次に、「気象(2)」で陸風・海風の仕組みを理解しましょう。
⇒ 中学受験の理科 気象(2)~気温と太陽および熱の伝わり方との関係
四季の細かな仕組みを、テストで問われることはあまりありません。日本の地理的な条件と四季の関係を、少しづつ解説していきますから、気象に関する物語として読み進めてくださいね。
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偏西風
まずは、季節に限らず日本では年間を通してつねに偏西風、つまり西から東に向かって風がふいていることを知っておいてください。
これは「大気の流れ」に関する地球全体の仕組みですから、季節とは関係ない現象です。
1年間を通した「太陽高度」を考えると、地球が太陽から受けとる熱量は、赤道に近い(緯度が低い)地域ほど大きくなりますね(⇒ 中学受験の理科 太陽の動き~これだけ習得すれば基本は完ペキ!)。
ということは、何もしなければ、赤道に近い地域は果てしなく暑くなっていくし、北極・南極に近い地域は果てしなく寒くなり続けるはず。
その現実に対して地球は、暑い地域と寒い地域との間で熱を運び合うことによって、地球全体における熱量のかたよりを小さくしているのです。
こうした熱の運ぱんは、海洋の流れによっても行われますが、大気の移動によるものが最も大きな力となります。もちろん、地球における大気の移動は複雑ですが、そのうちの1例を示した下図を見てください。
上図に示すように、赤道から緯度が南北30度あたりの地域までは貿易風(北半球は北東の風、南半球は南東の風)、緯度が30度~60度の地域では偏西風(北半球は南西の風、南半球は北西の風)がふいています。
日本は札幌が北緯43度、沖縄は北緯26度くらいで、ほぼ図の黄色部分にあたりますから、つねに偏西風がふいていることになるわけです。
たとえば、雨雲も偏西風によって西から東へ流されていきますから、それに伴って雨天も西から東に移っていくという現象がおこります。
下図は、連続した3日間の気象衛星による画像ですが、全国の天気が西から東へ移動していくようすが分かりますね。
ちなみに、偏西風は上空にいくほど強くなり、特に強い風の流れをジェット気流と呼びます。たとえば、飛行機は高度10kmあたりを飛んでいますが、東京から福岡まで約2時間かかるのに対して、福岡から東京は約1時間半。
西に行くときは偏西風が向かい風となり、東に行くときは追い風となるため、片道で約30分も違ってくるわけですね。
季節風
1年中おなじ方向の偏西風にたいして、季節ごとに一定の方角へ強くふく風を季節風(モンスーンともいう)と呼びます。具体的には日本の場合、「冬の北西風」と「夏の南東風」です。
詳しくは次の「気団」でのべますが、まずは前回に学んだ知識から、季節風の仕組みを考えてみましょう。少しだけ、陸風と海風の復習をしておきます。
陸風と海風の現象を考えるうえで重要なポイントは、次のような特ちょうでした。
- 陸(土)は、あたたまりやすく、冷えやすい。
- 海(水)は、あたたまりにくく、冷えにくい。
【夜:陸風】
- 陸(土)よりも海(水)が冷えにくいため、陸上の空気より海上の空気のほうが、あたたかくなる。
- そのため、海上の空気のほうが陸上よりも軽く、上昇していく。
- 空気が上昇したところをうめるように、陸上から空気が流れこむ(陸風)。
【昼:海風】
- 海(水)よりも陸(土)があたたまりやすいため、海上の空気より陸上の空気のほうが、あたたかくなる。
- そのため、陸上の空気のほうが海上よりも軽く、上昇していく。
- 空気が上昇したところをうめるように、海上から空気が流れこむ(海風)。
以上のような陸と海の特ちょうを、日本周辺にまで視野を広めてみると、下図のように考えることができます。
陸は、あたたまりやすく冷えやすいのですから、冬は陸が海よりも冷たく、夏は陸が海よりも暖かい(海のほうが冷たい)、はず。
冷たいほうから暖かいほうへ風がふくというパターンに従えば、夏と冬では以下のような季節風がふくと、考えることができますね。
上図から、「冬の北西風」と「夏の南東風」を説明することが可能となりました。ところが、「冬の北西風=寒い北風」をイメージすることはできますが、「夏の南東風=すずしい海風?」という感じになってしまいますよね。
この点を解決するためには、「気圧と気団」を理解しなければなりません。以降では、さらに詳しい仕組みを考えていきましょう。
気圧と気団
気象とは、地球の大気中でおこる現象(気温、湿度、風、雲量、雨、雪、雷など)のことです。
そのうちの1つである風について、風がおこる理由を説明するためには「気圧」、ふく風の性質を説明するためには「気団」を理解する必要があります。
気圧と季節風
まずは、風が発生する原因である「気圧」から。すでに「気象(1)」で解説していますが、簡単に復習してみましょう。
気圧とは「大気の圧力(空気から受ける力)」のことで、力が強ければ「高気圧」、弱いと「低気圧」です。力の大きさに基準があるわけではなく、周りと比べて気圧が高ければ「高気圧」、低いと「低気圧」となります。
地表面でおこる風については、高気圧から「ふき出し」、低気圧なら「ふきこみ」でした。高気圧と低気圧が存在する地域には、「高気圧(冷たい空気、下降気流) → 低気圧(あたたかい空気、上昇気流)」の方向に風がふくわけです。
日本列島にはつねに偏西風がふいていますが、強い季節風を考えるときには、風のもとである高気圧が、どこにあるのか見なければなりません。
高気圧が生まれる原因は以下の2つで、1つめは「冬の季節風」、2つめが「夏の季節風」の原因となります。
- 冷たい(収縮して重い)空気によって、下降気流が発生する。
- 地球の仕組みとして、もともと下降気流が発生している。
まずは、分かりやすい冬から。冬において、日本の周辺でもっとも冷たい地域といえばシベリアで、マイナス73度という最低気温を記録しているほどです。
非常に冷たい空気によって発達する高気圧は「シベリア高気圧」と呼ばれ、もっともあたたかい太平洋(低気圧)に向けて、北西の季節風が生まれます。
では、夏において日本周辺でもっとも強い高気圧は、どこで発生するのか。陸は熱しやすく冷えやすいのですから、大陸は海よりもあたたかくなります。つまり、大陸側は、海側に比べれば低気圧の地域となるわけです。
いっぽう海を見てみると、北の海のほうが冷たいから高気圧と考えたくなりますが、じつは太平洋あたりにもっとも強い高気圧が生まれます。その原因は、偏西風で解説した「地球全体における大気の流れの仕組み」にあるのす。
上図で示したように、偏西風の原因は、地球全体における「大気の移動システム」でした。そのため、赤道周辺では上昇気流、北緯30度あたりでは下降気流が発生しています。
つまり北緯30度あたりは、地球規模の大気の流れによる下降気流によって、高気圧が生まれるわけです。
北緯30度とは、下図に示すような地域。日本だと、鹿児島県の口之島(くちのしま)北部を、北緯30度線が通っています。
ふつうは太平洋高気圧と呼ばれていますが、北半球の北緯30度あたりは北太平洋高気圧、南半球の南緯30度あたりに南太平洋高気圧が生まれます。冬のあいだは、あまりにも冷たい大陸の高気圧で目立ちませんでしたが、夏になると太平洋高気圧の影響が強くなってくるわけです。
したがって、夏の日本周辺では、太平洋側の高気圧から、あたたかくなった大陸側(上昇気流、低気圧)に向かう、南東の季節風がふくことになります。
ちなみに、低気圧が生まれる原因は、以下の2つです。
- あたたかい(ぼうちょうして軽い)空気によって、上昇気流が発生する。
- 地球の仕組みとして、もともと上昇気流が発生している。
たとえば、地球における「大気の移動システム」では、赤道周辺で強い上昇気流が生まれており、これが熱帯低気圧(つまり台風)を発生させる原因となっているわけですね。
気団と季節風
風というのは、大気の流れです。気圧の変化による季節風の向きが分かったので、次は季節風によってどのような大気が日本に流れてくるのかを見てみましょう。
私たちが大気を感じるもっとも大きな要素は、気温と湿度(しめり気)です。広い範囲にわたって、気温と湿度(しめり気)がほとんど同じ空気のかたまりを、気団と呼びます。
まず、気温について、熱帯では1年を通して気温が高く、寒帯では気温が低くなります。
いっぽう、日本のような温帯は、もっとも寒ければ氷点下になったり、夏は熱帯と同じくらいの暑さになることもあるわけです。また、四季だけでなく、南北による温度差も大きいといえます。
次に、湿度ですが、日本は大陸と海にはさまれているため、湿度(しめり気)の違いによる影響も強くなります。
なぜなら、大陸側の湿度は低い(乾いている)のに対して、海側の湿度は高い(湿っている)からです。
つまり、日本の周辺は、上図に示す4つの地域に分類できることが分かります。
- (A):気温が低く(寒い)、湿度も低い(乾いた)。
- (B):気温が高く(暖かい)、湿度は低い(乾いた)。
- (C):気温が低く(寒い)、湿度は高い(湿った)。
- (D):気温が高く(暖かい)、湿度も高い(湿った)。
その結果、「広い範囲にわたって、気温と湿度(しめり気)がほとんど同じ空気のかたまり(気団)」は、日本の周辺で4種類あることになります。これらは、1年中つねに発達しているわけではなく、季節によって影響の強い気団が異なることに注意してください。
- シベリア気団:冷たく、乾いた気団
- 長江気団:暖かく、乾いた気団
- オホーツク海気団:冷たく、湿った気団
- 小笠原気団:暖かく、湿った気団
【参考】
「長江気団は、シベリア気団が変化したもの」という説もあります。
これまでに考えてきた風の向き(高気圧 → 低気圧)と、気団とを重ねあわせてみると、季節風の特ちょうを理解することができるはずです。
冬の季節風は、シベリア高気圧から太平洋に向かう北西風で、シベリア気団の冷たく乾いた空気が、日本に流れ込んでくることになります。
また夏の季節風は、太平洋高気圧から大陸に向かう南東風で、小笠原気団の暖かく湿った空気が、日本に強い影響を与えると分かりますね。
日本の四季
あらためて、これまでに学んできたことを復習しながら、日本の四季を整理してみましょう。
冬
シベリアの冷たい空気による「シベリア高気圧」が発達し、大陸から「冷たく乾いた空気(シベリア気団)」が流れこんできます(下図の左)。天気図(下図の右)を見ると分かるように、大陸側に高気圧、太平洋側に低気圧が広がっており、これを「西高東低の気圧配置」と呼びます。
上図の左をよく見ると、日本海側に雲があり、太平洋側は晴れていますね。この仕組みを、さらに詳しく見てみましょう。
下図を見ながら、流れる空気の性質がどのように変わっていくのか、追いかけてみてください。
- シベリア気団の「冷たく乾いた空気」が、日本海を流れるあいだに「しめり気(水蒸気)」をふくむ。
- 山脈にそって上昇する。
- 上空で水蒸気が冷えて雨雲となり、日本海側ではドカ雪と大雨が降る。
- しめり気(水蒸気)を失って、太平洋側へ。からっ風と呼ばれる、「冷たく乾いた空気」が流れ、太平洋側は乾いた晴れとなる。
夏
強い下降気流による「太平洋高気圧」が発達し、太平洋側から「暖かく湿った空気(小笠原気団)」が流れこんできます(下図の左)。天気図(下図の右)を見ると分かるように、太平洋側に高気圧、大陸に低気圧が広がっており、これを「南高北低の気圧配置」と呼びます。
下図の場合は、日本全国がスッポリと、太平洋高気圧におおわれていますね。北から南まで広い範囲で、厳しい暑さの1日だったようです。
春と秋
気団の説明でも述べましたが、長江気団はシベリア気団が変化したものという説もあるため、ここでは大きく「大陸と海」という視点で考えます。
昼の海風から夜の陸風に移っていくように、「夏が始まる前(春)」と「夏が終わった後(秋)」は、大陸のほうが海より温度は低く、どちらかといえば高気圧になりやすい状態となります。
ところが、大陸で生まれた高気圧は偏西風に乗って西から東へ動いていくため、「移動性高気圧」として日本を通過します。そのため、大陸側の暖かく乾いた空気による、さわやかな晴天がもたらされることになるわけです。
下図のように、高気圧は規則正しくゆっくりとした速さで、西から東へ移動。その結果、天気は周期的に変化します。
梅雨と秋雨
梅雨と秋雨は、発達した複数の気団がぶつかりあって生まれる前線が、東日本および西日本に留まることによって、雨が降り続くものです。
おもなパターンは、西日本が「長江気団と小笠原気団」、東日本が「オホーツク海気団と小笠原気団」によるものですが、非常に複雑なため理解する必要はありません。「梅雨前線」とか「秋雨前線」という言葉だけ、覚えておいてください。
下図のように、この日は梅雨前線が西日本から東日本にかかっており、九州から関東にかけて広い範囲で、雨となっていることが分かりますね。
以上で「気象(3)」を終わります。次のテーマは、「天気のことわざ」です。
⇒ 中学受験の理科 気象(4)~天気のことわざ観天望気(かんてんぼうき)
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