中学受験の理科 熱の伝わり方(伝導・対流・放射)の基本まとめ

 

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2023/09/01

 

熱は目に見えず、重さも体積もないエネルギーで、熱が移動することによって物質は次のように変化します。

  • 温度が変わる(あたたまる・冷える)。
  • 体積が変わる(ぼうちょう・しゅうしゅく)。
  • 状態(固体・液体・気体)が変わる。

熱エネルギーは、温度の高いものから低いものに移っていくわけですが、今回は「熱の移動によって温度が変わる」という点を中心にして、さらに詳しく見ていくことにします。

 

熱の伝わり方には3種類あるので、それらの違いに注意してください。覚えるというよりは、イメージできることが大切です。結論からいえば、その違いは次のようになります(移動のしかたが異なる)。

  • 伝導は、熱そのものが物の中を移動していく。
  • 対流は、熱が物といっしょに移動していく。
  • 放射は、伝導や対流のように熱を伝えるものは何もなく、直接移動する。

といっても、何のことだかさっぱり分からないでしょうが、以上のことを思い出しながら、読み進めてくださいね。

 

 

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熱の伝わり方【伝導】

 

熱そのものが物の中を移動していくのが、伝導です。金属は熱を伝導しやすく、空気・木・発砲スチロール・ガラスなどは熱を伝導しにくい物質といえます。発砲スチロールの容器を保温や保冷に使うのは、温度の異なる中と外のあいだで、熱が伝導によって移動するのを防ぐためなのです。

熱エネルギーに重さはありませんから、伝わる速さは上下左右で同じということになります。

 

 

伝わる速さが上下左右で同じですから、棒の全体があたたまるのに、A・B・Cは同じ時間がかかるということになりますね。いっぽう、Dは熱する所から両はしまでの距離が短いので、棒の全体が最も早くあたたまるわけです。

 

 

上図は、熱した部分から、熱エネルギーが棒の中に伝わっていくようすを示しています。くりかえしますが、熱そのものが棒の中を移動していくイメージを確認してください。

図のDについて、さらに詳しく見ていきましょう。

 

 

もちろん、熱が伝わる速さは上下左右で変わりませんから、熱する部分からの距離が短いほど、ろうは早くとけることになります。距離は、A(15cm)、B(5cm)、C(10cm)、D(20cm)なので、ろうがとける順番は、「B → C → A → D」です。

 

次は、銅の板の一部を熱した場合を考えてみましょう。このとき、熱は上下左右へと、同じように伝わっていきます。算数的にいえば、熱した部分を中心にして、同心円状に伝わるということです。

ちなみに、身近な金属では、熱を伝導しやすい順に「銅 > アルミニウム > 鉄」となります(電流を流しやすい順番と同じ)。

 

 

上図のように熱は、熱したところから同心円状に広がるようにして、伝わっていきます。右図を見て分かるように、このとき熱はまだE点に達していません。

A・B・C・D・E点のろうが早くとける順番は、「A → B → C=D → E」となります。

別の形をした、銅の板を考えてみましょう。作図をする必要はありません。熱が同心円状に広がるようすを、確認してください。

 

 

【左の図】
A点を熱した銅の板の中を、同心円状に熱が伝わっていきます(赤線)。

 

【まん中の図】
A点を中心にして同心円状に熱が伝わりながら(赤線)、B点に達した熱はB点を中心にした同心円状に移動していきます(青線)。

 

【右の図】
C点に達した熱は、C点を中心にした同心円状に移動していきます(黄線)。

 

伝導の最後は、校庭の鉄棒を考えてみましょう。

冬の寒い日は、ずっと外にあるのですから、鉄の部分も木の部分(いまは鉄がほとんどですが)も、ともに温度は外気と同じはず。ところが、鉄の部分はずっと冷たいのに、木の部分をさわっていると冷たくなくなり、むしろあたたかかくなりますね。その理由を考えてみます。

 

 

【さわる前】
鉄棒も木も、外気に接していますから、温度は外気と同じです。

 

【さわった時】
鉄棒も木も、さわった部分の温度は、あたたかい指によって上がります。

 

【図の左】
鉄は熱を伝導しやすいので、指の熱がすぐに他の部分に伝導するため、冷たいままです。

 

【図の右】
木は熱を伝導しにくいので、さわっている部分の温度は、すぐに指の温度(体温)と等しくなります。

 

熱の伝わり方【対流】

熱が物といっしょに移動していくのが、対流です。形を変えない固体に対流はなく、液体や気体が流れを起こしながら、流れとともに熱が全体へと移っていきます。

お風呂の湯があたたまったり、エアコンで冷房や暖房をするのは、対流の性質を利用するものです。

対流というのは、熱によって体積が変化(ぼうちょう・しゅうしゅく)し、物質の重さが変わることによって起こります。そもそも、物質の体積が変わると、なぜ重さが変わるのか、確認しておきましょう。

 

 

図の左は、物質のツブ(4ツブ)が、一定の体積を持っている状態を示しています。図の右は、あたためて「ぼうちょう」して、体積が4倍になったものです。

体積が4倍になっても、ツブの数は4つと変わりませんから、もちろん全体の重さは同じ。ところが、図の左と右を、同じ体積で比べると、左の4ツブに対して右は1ツブですから、「ぼうちょう」したほうが軽いということになります。

逆に冷やして「しゅうしゅく」した場合は、右から左の状態に変わるのですから、同じ体積だと重くなりますね。これらの変化が、対流をおこすわけです。

 

 

上図(左)で水の一部分(赤丸の部分)を熱すると、点線部分の水は「ぼうちょう」して軽くなり、上昇します。図で示したように、熱は水とともに移動していますね。

すると、上図(まん中)の黒い点線部分はカラッポになってしまうので、それをうめるような流れがおこります。

上図(右)のように、熱とともに移動した軽い水(湯)は上から順にたまっていきます。そのため、おふろで湯をわかすと上だけがあたたかくなり、よく混ぜてから入る必要があるわけです。

 

 

熱する部分を底の中央にすると、上図(左)のような対流がおこります。また、氷を浮かべると、対流の方向は逆ですね。

上図(右)で示したように、試験管の水をあたためるときは、上部を熱しても水の一部がすぐにわきたつので、底を熱すると水全体は早くあたたまることが分かります。

 

熱の伝わり方【放射】

 

伝導や対流のように熱を伝えるものは何もなく、熱が直接移動する伝わりかたを放射といいます。宇宙空間には空気も何もありませんが、太陽の発する熱は地球に直接とどいているわけです。この場合は、赤外線という目に見えない光で伝わっています。

たとえば、日光・たき火・ストーブなどに向かっていると、放射の性質を感じますね。

  • 直接あたるところはあたたかい。
  • ついたてでさえぎると、あたたかくない。
  • 直接熱のあたらない、背中はあたたかくない。

 

放射熱は白い物に反射しやすい性質をもつため、夏には白っぽい服を着ることが多くなります。逆に黒い物には吸収されやすいので、冬は黒っぽい服を着ることが多くなりますね。

 

 

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